高齢の方の爪に関する管理のコツ~手ごわい巻き爪、分厚い爪と共に生活するには~
高齢の方の爪は、巻き爪や、爪そのものが分厚くなって指に乗っかっているように見える爪など、大変個性的ですよね。そんな爪は管理がとても大変です。
そのような個性的な爪の高齢の方を介護しているみなさんに、
爪管理のコツをお伝えします。
1、巻き爪の場合の対処法
巻き爪とは爪の左右の端が内側に巻くように変形している状態です。すごい方だとし正面から見てまるで「の」の字のように巻いている強者もお見掛けしたことがあります。その巻き爪が悪化して指に食い込むと痛み、出血や化膿などえらいことが起きます。ただ巻き爪なだけなら、あまり問題ではないのですが、巻き爪を放置しておくと、食い込むところまで悪化してしまう可能性があります。ですので、食い込むことを予防するために、これ以上巻かないようにするという考え方を持ちましょう。
ちなみに食い込んでしまうと何らかの医療処置が必要なので、看護師か皮膚科医に相談してくださいね。
巻き爪の悪化予防ポイントは
・爪は短すぎず、長めをキープすること(深爪をしない)
短いと自然に丸くなってしまい巻き爪を助長します。
・爪を切るときに、丸く切らず、まっすぐ切ること
丸く切ることで巻く力を助長してしまいます。爪の先端の形が四角くなるように切ると巻く力を低減させることができます。とはいえ、四角く切った角の部分はとがってしまいますよね。わずかに角を取るように切ったり、やすりがけをしたりしてとがりをなくすとよいでしょう。
高齢の方は、長年爪切りを自分で行ってきているため、切り方の癖がありますよね。
そして、多くの方が爪を短く丸く切る癖がついています。その長年の積み重ねによって「巻き爪→食い込む」という悲劇が引き起こされています。くいこんだ爪の処置のために皮膚科に定期通院するなんてとても大変ですよね。ぜひ切り方の習慣を見直すようにしてください。
2、分厚い爪の対処法
爪が分厚くなってしまう原因はさまざまですが、
とにかく爪が分厚いせいでひっかかりますよね。靴下や靴や布団やら…何かと爪を気にして生活しなくてはならないのでストレスですよね。
こちらも改善は難しいので、爪が引っかかって爪が取れ、傷ができることを防止するという考え方を持ちましょう。
分厚い爪が取れてしまうのを防止するポイントは
・削れるなら削って小さくする
一般的な爪切りでは到底太刀打ちできないと思うので、ニッパーを使用します。しかしニッパーを使用するのは怖いですよね。だからやらなくていいです。爪やすりでやすりがけをして地道に削ってください。
できるなら、足湯をしたあとに実施すると爪が柔らかくなり削りやすくなります。入浴やシャワーのあとも適しているでしょう。
・保護して引っかかりにくくする
削るのが怖い、うまくできない、削ってもあまり変わらないという方はガーゼや絆創膏で保護して引っかからないようにしましょう。
そして次の文章を読みましょう。
3、怖い爪を「切る」のはやめて、やすりをかける
爪切りは細かい作業です。介護者世代のみなさま、細かいものが見えづらくなっていませんか?
私も訪問先で「爪切りはよく見えないから肉切ってしまいそうで怖い。」という声を多数耳にします。特に巻き爪や、分厚くなっている爪は切るのが至難の業です。
頑張って切ろうとして肉を切ってしまっては大変です。傷ができて化膿することも考えられます。
そこで、怖い爪を自分で「切る」ことはやめましょう。
爪やすりを活用してやすりがけをするようにしましょう。地道な作業のように見えますすが、案外短時間で短くなるものです。
4、怖い爪を「切る」のはサービス事業者に任せる+任せるときのコツ
巻き爪や分厚い爪など怖い爪を「切る」のは利用しているサービス事業所のスタッフに任せましょう。
介護保険サービスはどのようなものを使っていますか?
デイサービスやデイケアで入浴している場合は、入浴後に看護師あるいは介護士に切ってもらいましょう。
訪問看護を利用している場合は、訪問看護師に切ってもらいましょう。
訪問入浴を利用している場合でも同様です。
ただ、ここで一つ介護者のみなさんに理解してもらいたいのが、
各サービス事業所も、いつも爪切りできるわけではなく、やれる時とやれない時があるということです。
時間的に人員的に余裕があるときにしかできないという現実があるのです。
デイサービスなどを例に挙げると、デイサービスでは日中の利用時間にほぼ全員の利用者さんの入浴支援をしなくてはいけませんね。そのみなさんの入浴に加えて爪のケアはかなり難しい状況です。また爪切りに一人の看護師が取られるとほかの処置に手がまわらないため困った状況になるということです。
そして、爪切りは、仕方がないことなのですが優先順位が後回しにされがちです。入浴後は指定された薬の塗布や、褥瘡(床ずれ)処置が優先されます。
私たち訪問看護も、指定された時間の中で入浴介助や体調確認に加えて爪切りとなると時間をオーバーしてしまう可能性があり、その状況によってできる場合とできない場合があります。
そこで、介護者のみなさま、3でお伝えしたことを実践しましょう。怖い爪以外の安全な爪はやすりがけをしておきましょう。
そして、デイサービスや訪問看護、訪問入浴のスタッフにこのように伝えます。
今日は巻き爪になっている足の右の親指と左の小指だけ切ってほしい。そこは自分ではできない。あとの爪は自分でできる限り頑張ったのでよろしく。
すると、サービススタッフはこう思います。
二本だけ切ればよいのか!それなら入浴後にささっとできるぞ!
そうなんです。
爪切り全部をお願いされると足だけでも10本なので時間的に無理だと考えてしまうことが多いです。そしてできずにまた来週…。という話になりがちです。
このような依頼の仕方、提案の仕方をされると、私たちサービス事業者も
配慮をしていただいているな、と感じられ、快く2本の爪を切ることができます。
また、急いで10本の指の爪を切られたがために深爪にされた、肉を切られたというトラブルを予防できます。これが実はよく聞きます。切ってもらえたは良いが、短く切られてしまい、そこが少し伸びたころに皮膚に食い込んだという例はよく伺います。
サービス事業所スタッフに、最初から怖い爪2本に集中させることで、このようなトラブルが起こらないよう慎重に丁寧に切らせる、ということがねらいなのです。
最後は心理作戦のような提案をしてしまいましたね。
サービス事業所と円滑で良好な関係を築いていくことは介護を楽にしていくうえで重要です。良い関係を築くことで良い結果がもたらされます。
ぜひ参考になさってください。